新・総合診療医学 診療所 総合診療医学編 第3版
監修のことば
2012年2月に新・総合診療医学の第1版がリリースされてから,7年が経過しました.
当時としては,かなり挑戦的で荒削りな企画であった第1版は,幸運にも「赤本」の愛称のもと,幅広い世代に多くの読者に恵まれることになりました.そして,様々な建設的なご意見やご提案をいただきながら第2版,第3版と改訂を進めることができたことは,読者の皆様の支えによるものであり,編集代表として感謝の極みです.
この間,日本専門医機構が設立され,総合診療専門研修制度が立ち上がるなど,総合診療をめぐる多面的な動きが多くありました.総合診療医がこれからの日本のヘルスケアシステム,あるいは地域包括ケアの充実のための重要なキーの一つであることは,間違いない状況といえます.しかし,総合診療がその学問的独自性を主張することについては不十分です.その問題解決に寄与すべく編集や改訂を進めてきましたが,まだまだ道半ばであろうという思いにかられるほど,総合診療の学問的射程は広く深いのです.
この「診療所総合診療医学編」の取り扱う領域群は,地域プライマリ・ケア外来診療と在宅診療において,それらに卓越するためにはどのような知識や技術が必要なのだろうかという問いに答えようとするものです.少なくとも内科学などの既存の臨床医学分野でカバーしていない広大な領域がそこにあるのだということは提示できていると思います.
また総合診療に関する言説にありがちなシニシズムやルサンチマン,あるいはアクロバティックな論理展開,レトリックの多用はできるだけ避け,ストレートでポジティブな打ち出しをするという編集方針は,この第3版でも貫けていると自負しています. 若い専攻医や学生に読んでいただきたいということはもちろん,地域のベテラン医師やこれから総合診療の道に入ろうとしている,すでにキャリアのある医師のためのブラッシュアップにも役に立つ内容になっていると思います.また,今後プライマリ・ケアの現場での活躍が期待される看護師,あるいは診療看護師(ナース・プラクティショナー)にとっても良い学びが得られるでしょう.
今回3名の若い編集委員をあらたに迎え,新しい書き手の方々のピックアップを心がけたことにより,フレッシュな新版となっています.あらためて,これまでこの書籍の作成に寄与してくれた多くの皆さんに感謝の意を表したいと思います.
目次
Ⅰ 日本の家庭医療
1 日本の人口動態と医療・社会保障
2 日本における家庭医療の歴史と展望
3 プライマリ・ケアと医療政策
4 日本における診療所プライマリ・ケアの質を評価する
Ⅱ 家庭医の臨床的方法
1 メディカル・インタビュー(医療面接)
2 プライマリ・ケアにおける臨床推論
3 家庭医療における健康観
4 生物心理社会的アプローチ
5 患者中心の医療の方法
6 家庭医療の枠組みとしてのThe Clinical Hand
7 ケアの継続性
8 家族志向性アプローチ
9 地域志向性アプローチ
10 患者教育と行動変容
11 複雑な臨床問題へのアプローチ
12 倫理的問題へのアプローチ
13 家庭医療における健康観に基づく診療 ―身体心理社会
記号論的( Somato-Psycho-Socio Semiotic)モデル
14 Evidence-Based Medicine(EBM)
15 Narrative-Based Medicine(物語に基づく医療) /
Narrative Medicine(ナラティブ・メディスン)
16 医療の質改善
17 健康の社会的決定要因へのアプローチ
Ⅲ 家庭医療の諸相
1 急性期ケアにおける家庭医の役割
2 慢性期ケアにおける家庭医の役割
3 緩和ケアにおける家庭医の役割
4 予防医療/ヘルスメンテナンスと家庭医
5 小児のワクチンと健康診断・発達支援
6 ヘルスプロモーションと家庭医
7 在宅医療における家庭医の役割
8 へき地・離島医療における家庭医の役割
9 リハビリテーションと家庭医の役割
10 統合医療
11 漢方と家庭医
12 家庭医とチームワーク/ リーダーシップ(診療所運営)
13 診療所の経営
14 地域包括ケアにおける専門職連携実践 ( Interprofessional Work)
Ⅳ ライフサイクルと家庭医療
1 ライフサイクル,ライフコースと家庭医療
2 子どものケアと家庭医
3 思春期のケアと家庭医の役割:外来中心
4 成人のケアと家庭医の役割
5 高齢者ケアと家庭医の役割
6 Women’s Healthと家庭医
7 マタニティ・ケアと家庭医
8 家庭医とスポーツ医学
9 園医・校医・産業医と家庭医
10 国際保健と家庭医
Ⅴ 在宅医療の実践
1 在宅医療の導入
2 在宅医療における専門職連携実践
3-1 摂食嚥下障害
3-2 栄養管理
4 排泄(排尿・排便)
5 褥瘡の診断と治療
6 在宅リハビリテーション
7 人生の最終段階における意思決定支援―在宅医療の視座から
8 非癌疾患の在宅緩和ケア
9 スピリチュアルケア・グリーフケア
10 認知症患者(BPSDへの対応含む)の在宅医療
11 神経難病の在宅診療
12 関係性で語る居宅系施設での在宅医療
13 急性期の在宅ケア
14 小児在宅医療
15 総合診療医が知っておくべき介護保険制度の基本
16 地域ケア会議の運営
コラム:在宅医療の管理物
Ⅵ 家庭医が出会う症状:病院や専門医への紹介のタイミング
1 成人の腹痛
2 小児の腹痛
3 落ち着きがない子ども
4 不正性器出血,帯下異常
5 不安障害
6 抑うつ気分
7 不眠
8 しびれ
9 関節痛
10 腰痛
11 胸痛
12 動悸
13 息切れ・呼吸困難
14 血便
15 乳房腫瘤
16 意識障害
17 けいれん
18 咽頭痛
19 慢性咳嗽
20 リンパ節腫脹
21 下痢
22 便秘
23 Dyspepsia症状(胸焼けを含む)
24 食思不振
25 めまい
26 倦怠感
27 発熱
28 耳痛
29 頭痛
30 頚部痛
31 黄疸
32 皮疹
33 排尿障害
34 勃起不全
35 体重増加・減少
36 アルコール多飲
37 ポリファーマシー
Ⅶ 家庭医が担当する重要な疾患と家庭医の役割
1 成人の上気道感染症
2 アレルギー性鼻炎
3 小児のかぜ症候群
4 熱性けいれん
5 成人気管支喘息
6 小児気管支喘息
7 高血圧症
8 糖尿病
9 脂質異常症
10 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
11 狭心症
12 慢性心不全
13 心房細動
14 慢性腎臓病(CKD)
15 成人の急性肺炎(市中肺炎)
16 小児の急性肺炎
17 尿路感染症
18 胃炎・胃潰瘍・逆流性食道炎
19 過敏性腸症候群
20 骨粗鬆症
21 変形性関節症
22 認知症
23 高齢者の皮膚疾患
24 前立腺肥大症
25 更年期障害
26 うつ病
27 不安障害
28 身体症状症および関連症群
29 不眠症
30 複雑性悲嘆
31 慢性便秘
32 片頭痛・緊張型頭痛
Ⅷ 家庭医と医学教育
1 地域基盤型医学教育とは何か
2 診療所における医学教育
3 家庭医の生涯学習
Ⅸ 家庭医と研究
1 プライマリ・ケア研究の現状と今後
2 プライマリ・ケア研究の実際―量的研究
3 プライマリ・ケア研究の実際―質的研究
4 診療所による多施設共同研究グループ(PBRN)
Index





