①職人としての家庭医―筋力検査と運動療法
「日本の高価値医療」シリーズ①
医師の役割はひとりひとりの患者にとって価値の高い医療を患者と話し合いながら賢く選択していくことです。
米国の医療経済学者によると, 米国の国民医療費の総額のうち約3分の1は「低価値医療Low-value Care」と言われます.すべての国の医療にはLow-value Careがあります.米国に引き続き,カナダや英国,スイスなどでは,低価値なケアの内容をリストアップして,医師と患者の双方に対して,その適応を「再考」するように促す活動を開始しました.一方,わが国では,「ジェネラリスト教育コンソーシアム」が中心となって,Choosing Wisely Japan活動が結成され,ムック版シリーズ(当日のface to faceの議論と依頼論文で構成する本と雑誌の中間の体裁)でその内容が紹介され,大きな反響を得ました.またその第9回「ジェネラリスト教育コンソーシアム」(2015年)では,日本であまり行われていない「高価値医療High-value Care」と,日本でよく行われている「低価値医療Low-value Care」を取り上げ,その低価値リストのなかで「避けるべき・止めるべき」優先順を決定し,ムック版を2016年4月に刊行しました.
このような活動の上に立ち,世界の医学界の趨勢を展望して,このたび私たちは,「日本の高価値医療 High-value Care in Japan」単行本シリーズを刊行します.
この単行本シリーズでは,
・高価値なケアHigh-value Careをもっとやってみよう
・不十分なケアLow-value Careは改善しよう
の2つを柱に,教育的な症例や事例を挙げて日常診療の指標を提供します.
高価値なケアには,「こうすれば患者ケアは成功し,患者の満足度も高まる」という最新のエビデンスを提供します.
低価値なケアには,「このような医療介入では、患者に起こる有害リスクが大きくなり、ケアにむだが生じ,患者満足度も上がらない」という注意点を提供します.そしてベストプラクティスのための科学的エビデンスと臨床基本技能のアドバイスを,指導医と研修医の対話形式で,平易に解説します.
また論稿のポイントを世界に発信するために各論稿の末尾に英語で要旨を記載します.
本シリーズは,沖縄からスタートします。そして、全国の家庭医,病院総合医の多くのジェネラリストの諸先生,施設のご協力を得て,わが国にこれまでに見なかった新しい出版活動を展開していきたいと思います.
【刊行のことばより】
JACHO本部顧問 徳田 安春
沖縄県立南部医療センター・こども医療センター 仲里 信彦
稲福内科医院 稲福 徹也
沖縄県立宮古病院 本永 英治
沖縄県立中部病院 本村 和久
目次
第1章 運動療法と認知エラ-を学ぶ症例
1 風邪症候群高齢者が寝たきりにさせられる
医療従事者と患者自身の思い込みエラ-症例 ―運動療法は必要なし―
2 身体所見欠如による過剰入院 ―思い込みエラ-症例(低価値医療)―
3 高齢者パ-キンソン病のヤ-ル5は真か否か ―情報不足(低価値医療)―
4 過去カルテサマリ-がないことで起こる低価値医療 ―情報不足―
第2章 コモンディジ-ズ過用症候群と高齢者サルコペニア患者の運動療法を学ぶ症例
5 日常ベッドサイドで遭遇する上腕骨外顆炎
6 日常遭遇する上腕骨内顆炎
7 日常外来にて遭遇する浅指屈筋腱付着部炎
8 脳梗塞による右不全麻痺に合併した大腿四頭筋付着部炎
9 サルコペニック・オベシティに伴う大腿四頭筋付着部炎
10 階段昇降で発症した大腿筋付着部炎 ―術後リハビリ―
11 ベッド上安静でも起こる肩・肘・手関節炎など
12 忍びよる原発性サルコぺニア
13 肉体労働者に合併しやすい骨関節疾患 ―変形性関節症と神経根症―
14 ポストポリオ症候群 ―筋力2の世界との遭遇―
15 運動不足が引き起こすサルコペニア ―高齢者閉じこもり:中臀筋筋力低下―
16 高齢肥満者に頻繁にみられる過用症候群 ―サルコペニック・オベシティ―
17 頸椎症性神経根症と上肢筋力低下 ―過用症候群を考える―
第3章 コモンディジ-ズに対する運動療法・運動学の基本を学ぶ症例
18 サタディナイト症候群に頭部CT ―下垂手;橈骨神経麻痺 ―高・低価値医療―
19 五十肩―肩回旋腱板炎(断裂) ―運動療法のホ-ムエクササイズで指導―
20 肩こり 姿勢指示で緩和する肩こり頭蓋骨と頸椎の運動力学関係を探る
21 他動不全症例:麻痺と誤りやすい下垂足の診断 ―徒手筋力検査の基本手技―
22 高齢者腹筋筋力低下 ―自動不全と他動不全―
23 腰痛と対策 ―運動学を利用した家庭における工夫―
24 不全麻痺と運動療法 ―過用症候群を防ぐ―
25 痙性麻痺と運動療法 ―他動不全予防と関節拘縮―
26 高齢者運動療法とサルコペニア ―高齢者サルコペニア対策―
27 筋力低下した高齢者患者の在宅での運動療法の基本
第4章 多様性と臨床運動学の視点を学ぶ症例
28 足関節偽痛風を蜂窩織炎と診断し入院後10日間抗生物質点滴 ―(低価値医療)―
29 炎症と多発関節炎の背景に潜む病態を理解する ―ACTH単独欠損症―
30 炎症と全身痛の背景に潜む病態を理解する ―ACTH単独欠損症2―
31 頚部筋力評価の方法は知識を要する ―(高価値医療)―
32 寝たきり患者の膝関節炎の病態を探る ―(高価値医療)―
33 関節リウマチ患者の激しい肩関節炎に対するアプロ-チ ―(高価値医療)―
34 股関節周囲筋筋力低下患者に杖の使用法を指導 ―中臀筋筋力低下とトレンデレンベルグ歩行 (高価値医療)―
35 リハビリ継続の意義と運動学の視点 ―(高価値医療)―
36 下垂足を訴える患者への診断的アプロ-チと運動療法
37 頚椎椎体前方骨棘形成による声門筋圧迫による嗄声 ―びまん性特発性骨肥厚症(diffuse idiopathic skeletal hyperostosis:DISH)―
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